oboeteiru

オボエテイル [DVD]
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制作年:2011年(日)
原作:高橋克彦
収録時間:126分

カテゴリ:サスペンスホラー

>直木賞を受賞した「緋い記憶」をはじめ、高橋克彦原作によるホラーミステリーを映像化した短編オムニバス。自分の都合で歪めてしまった記憶とは違う真実に直面する人々の姿を豪華俳優陣が好演。「遠い記憶」「前世の記憶」「緋い記憶」の3編を収録。

オムニバス形式で3話収録。
結構借りるまで時間がかかったことと、口コミ評価が上々だったことから期待しての視聴となりました。

各話ごとにレビューします。

【#1遠い記憶】

監督、脚本:芳田秀明
出演:村上淳、麻生祐未、浅井江理名、吉田日出子
収録時間:約40分

[ストーリー]

作家:倉本雄二(村上淳)は、盛岡生まれだが、幼いころから都内を数十回も転々としている。今回は出生地の盛岡へ取材へ向かい幼いころ記憶を辿る。
盛岡の案内役となったクラブのママ:あいざわよりこ。
「ここでは、架空の名前は困ります。」
彼女は倉本に囁く。
「オボエテイル」
そこには改ざんされる前の記憶の欠片が残っていた。

[所感]

観て驚くような怖いシーンはなかった。
だいたいが想定範囲内でストーリーが進み、その点では冒頭から退屈である(一度目は寝落ちしました)。
故郷での「恐怖」体験により、自らの記憶を改ざんした主人公:倉本。再びその地を訪れることで、当時の記憶が鮮明に蘇り、封印していた出来事が明らかになるのだが、その過程がダラダラと進む感じだ。

盛岡で倉本を待ち続ける「よりこちゃん」の執着も、表現としておとなしい。30年も待ち続けたのだから、もっと怨念じみたものを感じさせて欲しかった。
ただ倉本の母親(吉田日出子)がいい具合の雰囲気を醸し出している。ラストの何かに取りつかれている、もしくは、頭のネジが飛んでいるような表情は上出来だと思います。

[評価]

怖さという観点から
★☆☆☆☆ 
とします。

 

【#2前世の記憶】

監督:明石知幸
出演:中村美玲、葛山信吾、結城しのぶ、島かおり、篠井英介
収録時間:約40分

[ストーリー]

頭の中に出てくる少年と、その子供に迫る影。そんな夢に悩まされている主人公:のぶこ。
催眠療法で過去の記憶を辿り、原因を突き止めようとするが、その記憶には自分ではなく、夢にでてくる少年の姿だった。

[所感]

この物語の舞台も盛岡である。
僕は原作の高橋克彦さんの作品は読んだことがない(たぶん)のですが、氏は何か盛岡に思い入れがあるのでしょうか?
確かに「恐怖小説」なる作品をいくつか読んだことがありますが、舞台として盛岡を含めた東北地方のお話が多いと感じています。

結構面白かったです。
詳しくはネタばれに続けますが、ストーリーのテンポもよくラストのどんでん返し(?)もまずまずかと。
全く知らない他人の過去を共有する恐怖。
体験してもいないのに、まぶたの裏に浮かぶ情景と、その場の感情。劇中でのぶこが語っていますが、「まるで知らない他人が身体の中に入っているみたい」との表現が的を得ているように感じます。
過去の惨劇で命を落とした少年。
母親と祖母を殺され、自らも犯人を知りながらもその手にかかり殺められてしまった無念さ。

欲を言えば、徹底的にのぶこに情念(怨念か)をぶつけ、壊してゆく過程があると、さらに怖い作品になったかもしれません。

[評価]

★★★★☆
そこそこ怖く仕上がっていると思います。

 

【#3緋い記憶】

監督、脚本:久保朝洋
出演:香川照之、柄本時生、大田ななみ、筒井真理子、渡辺真起子、蛍雪次郎、光石研
収録時間:約40分

[ストーリー]

主人公:山野(香川照之)の元に、故郷の友人:加藤が訪ねてきます。その夜、山野は加藤の持ってきた高校生当時の盛岡の都市図を眺めますが、山野が探す家が見つかりません。そこには「空き地」の文字が。山野の記憶では、その「空き地」には家があり、ひと夏を一緒に過ごした「あやこ」が住んでいました。いぶかしむ山野は、違う年の地図で探しますが、存在しませんでした。

そんな折、山野の元へ盛岡から加藤の訃報が入ります。
数日後、弔問を兼ねて帰省した山野は、その家を訪ねる(確認する)べく向かいますが...

[所感]

やはり舞台は盛岡です。

実は主演の香川照之さんって、かなり以前から好きな俳優さんです。どれくらいかというと、Vシネマの「静かなる首領(ドン)」から好きです。TVでは中山秀征さんが演じましたね。Vシネの印象が強い僕は、どうしてもTV版に馴染めなかったです(今でも観てません)。
彼に是非やっていただきたい配役があったりします。
「豊臣秀吉」です。
なんか似合いそうなんで観てみたいと思っています。

さて。内容ですが「怖さ」はありませんでした。
山野の記憶を否定する地図
自分の過ごした夏はなんだったのか?
「あやこ」と過ごした時間は、山野にとってはかけがえのない事実なのに、状況がそれを否定します。

攻殻機動隊」(映画版)にも似たようなシチュエーションがあったことを思い出しました。もっともソチラは人為的な記憶操作ですけど。
また日本古来の怪談「牡丹灯籠」とも被りました。ただソチラは怨念によるものですけど。

冒頭、友人:加藤が山野に語ります。
「当時の地図(地図に家主の名前が入っている詳細なものです)を眺めるといろんなことが思い出されてくる」
「地図の中には若かったころの思い出がちゃんと活きている」

なんかいいなと思いました。歳のせいですね。

「みんなで集まって酒でも飲めば、当時言えなかったこととか話せるじゃないか。」

禿同です。

[評価]

残念ながら「怖さ」の観点からは
★★☆☆☆ 
なのかなと。

結局、山野が「あやこ」の虜になった原因(山野が選ばれた理由)が判然としません。たまたま山野だっただけで、他の誰でも「犠牲」になる話として「★」1つ分増やしました。
まあ好きな俳優さんなので甘い採点と取っていただいても結構です。

元より「怖さ」よりも、「切なさ」や「温かさ」を強く感じた作品でした。

 

【総括】

記憶をテーマにした3作品。
単純に表現の「怖さ」を求めると失敗するでしょう。
しかし、それぞれ味のある作品に仕上がっていると思います。

現在の自分を形成している過去の記憶。
その記憶が間違っていたとしたら...
そんな事実が無かったとしたら...
客観的に否定されたら...

その時、自分は自分を維持できるのか?
そういった怖さを感じる作品でした。

 

例によって、続きはネタばれです。

カテゴリとしてホラーだと違和感がありますね。
ヒューマンドラマを見終わったような感じを受けています。

 

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(続き)ネタばれ注意


【#1遠い記憶】

クラブのママ、よりこが実は幼馴染の「よしこちゃん」だったのである。倉本が東京で幼馴染と遊んだ記憶は、そのまま盛岡で体験した事実であった。

当時「よしこちゃん」の母親と倉本の父親が愛人関係であり、それを知った倉本の母親が二人を殺した設定のようだ(心中のようにも思えるのだが定かではない)。

実際30年も持ち続ける「よしこちゃん」と、息子の出張すら嫌がるほどの母親。二人の過剰な愛情(狂気)がストーリーを盛りたてると思うのだが、「静かなる狂気」が恐怖として十分に伝わってこなかったのが残念。

 

【#2前世の記憶】

のぶこが辿りついた過去。
それは「田島明彦」という名の少年の記憶でした。

40年前あきひこは家族と共に強盗に惨殺されました。犯人は未だ捕まっていないとのこと。のぶこは夢の中で明彦が殺される瞬間を体験します。
明彦のお墓参りをして一件落着。

とはいきません。
明彦は納得していません。

のぶこは恋人(夫?)との間の子供を身ごもります。
そんなのぶこの元に明彦の担任から田島家の記念写真が送られて来ます。
そこにはのぶこの父親の姿がありました。
田島家を惨殺した犯人はのぶこの父親でした。
激しい頭痛と共に、再び蘇る過去の記憶。
幼いのぶこをあやす父親に、「おまえが僕とお母さんを殺したね」と告げるのぶこ(明彦)。
腰を抜かし、悲鳴を上げて逃げる父親。
そして、首を吊って自殺した父親を見上げる幼い信子。
表情は軽く微笑んでいました。

全てを知ったのぶこ。
ガラスに写るのぶこの顔が青白く豹変します。
明彦が決して許していないことを。
そして自身が身ごもった「モノ」は何なのか?
のぶこの絶叫で終劇です。


【#3緋い記憶】

結局、山野が過ごした高校時代のひと夏は、この世のものでは無かったようです。

盛岡で偶然高校時代の恩師に出会うのですが、恩師は場末のスナックを営んでおり、そこには高校時代に山野が描いた「あやこ」の絵が飾られていました。
山野は恩師に告白します(むしろ独白に近いか)。

その日、山野が「あやこ」の家に行くと、家の中は荒らされ、「あやこ」は乱暴された後でした。
そんな「あやこ」の姿に欲情した山野は、計らずとも「あやこ」に襲いかかります。まさに殺す寸前で正気に戻った山野。彼が見たものは「あやこ」と同居していた老人(あやこの祖父)の他殺体でした。怖くなって逃げ出す山野。

話を聞いていた恩師は、似たような事件が過去にあったと告げます。曰く、老人と孫娘が殺され、以降その地は空き地となっていたとのこと。
にわかに信じられない山野。
あの夏の記憶の所在が無くなってしまったのです。
「信じない」と激こうする山野。恩師のスナックを飛び出すとその地に向かいます。「幻では無い」「その後の人生こそ幻なのだ」と。

そして、やはりそこには家がありました
山野が「あやこ」とひと夏を過ごしたあの家が。
「やっと見つかった」と山野。
記憶のままの姿をした玄関。
「あやこ」を呼ぶ山野。
しかして玄関の扉は開かれ、記憶のママの年格好した「あやこ」が姿を現します。

山野は一歩ずつ踏み出します。
しかし、山野に見えている玄関は公道上で、走ってきた車に撥ねられます。

そうして、ようやく山野は「あやこ」と一緒にいることができるようになりました。その顔は穏やかなままです。

オカエリ」とあやこは言います。

なんで山野だったのでしょう?
たまたまだったのでしょうか?

 

以上です。